渾身猫パンチ

書きたいときだけ息を吹き返す間欠泉

大河ドラマ「真田丸」第11回「祝言」

  • 予告編ですでに信繁の涙の場面は明かされていたので、どういう理由の涙だろう?と一週間考えていた。おそらく討ち取られる室賀さんの、いまわの際になにか泣かせる展開があるのか? もしくは室賀さん以外の誰かに危害が及ぶのか、考えたくないけど梅ちゃんの体に障りが?とか。
  • 今日、予想は外れたまま最後の場面にたどり着いて、じゃあ父上に欺かれたのが悔しかったのか、でもそれはいまさらちょっとウブなことだなあ、なんて思ってた私の心根ごと小突かれた気がした。信繁は「欺かれたことは悔しくない」自分が悲しかったんだ。
  • 思えば、春日事件で人を裏切ることに嫌気がさした信繁は、自分と家族(の代表として梅ちゃん)を守るためという意義のもとに立ち直ったんである。その後の上杉談判では、言葉を飾りこそすれ上杉を裏切ったわけではないし(これね! 大事なことなので余談ですが言いますけど少なくとも第10回では景勝さんはなにも騙されてないですよ! 結果として上杉の評判も上がったし人情ギャンブラーの景勝さんは賭けに勝ったんですこの回は!)悩む必要はなくやってこれたのだ。でもここにきて、守るべき妻の喜ぶ顔さえ計略の前には優先されないというなら、その守ってる対象ってなんなんだろう?
  • いやね、そんなこと書きながら私自身は、「そんな、その場の喜びとか楽しみとかより生き抜くために必要なものがあるわけでしょ」と思っちゃったりするわけですよ。そういう建設的な意見が言える私であるとか思ってたりするわけですよ。単に自分が権謀術数が好きってだけの話かもしれないのに。たぶんそんな感じの人は私以外にもけっこういると思うんだ。そしてそんな感じの人は「私の妻のために憤ったのは私ではなかった」って言葉にさ、軽く小突かれたんじゃないかな。打ちのめされるほど残念ながら純真ではないにしてもさ、小突かれててほしいな。
  • たとえ他愛なくとも策とは人の心を弄ぶものである、というメッセージ、すでに薫様調略の場面で表されていたのね。
  • 「私はどこへ向かうのですか」という信繁の問いが、どうやらドラマ全体を貫く問いになってゆくらしいと見えてきた、全体の5分の1が終わった次の回。ていうか5分の1終わっちゃったんだ!? 早いな!?
  • そしてただ「悩め」と答える信幸。彼がたびたび父上に物申すのは父上の発言がひらっひら翻るからであって、「その場の喜びとか楽しみとかより必要なものがある」という点については、とうに腹をくくってるんだこの嫡男は。それでも祝言を利用することに一度は反対する兄ちゃん、ほんとに実のある男だよ。(そして信繁は、たぶんその場にいても反対しなかったであろう自分が嫌なんだ)
  • そんな兄ちゃんの妻に似つかわしい振る舞いを初めて見せたおこうさん。わけを問いただすこともなく、夫に課せられた使命を粛々とやり遂げた(一応)。かっこよかったです、たとえその手段が極めて三谷劇場ここにあり的だったとしても!